賃貸経営での避けられないトラブル、ご相談ください
株式会社きびる不動産(アパマンショップ田川店)

今回は2つの事例をご紹介します

#01

夜逃げされた時の対処法は?

Q. 家賃を6 ヶ月滞納している借主が連絡がとれません。

夜逃 げしているように感じられますが、中に入って荷物を処分しても大丈夫でしょうか。



A. 無断で中に入るのは住居侵入の罪になります。


荷物を処分するのはもっての外です。


まず中の様子を確かめなければなりません。


中で異常な事態になっているかもしれませんので、警察官や第三者に立ち会いを頼んで、合い鍵で入ります。


もし予想通りの夜逃げなら、内容証明等で契約解除を宣言して、 明け渡し訴訟を行い、執行文付与の判決をとって強制執行します。


費用も時間もかりますが、リスクゼロの方法はこれしかありませ ん。



Q. 夜逃げされた部屋を片付けるには「明け渡し訴訟」しかない、という答えですが、それでは時間と費用がかかり過ぎて現実的ではないと思います。

もっと短時間に解決 できる方法はないのですか。



A. リスクゼロで行うには、その方法しかありません。


以前に現場で使われた手口で、連帯保証人に契約解除してもらい、 保証人の責任で荷物を片付けてもらう、という方法があります。


この場合、連帯保証人に契約を解除する権利があるか、が争点に なります。


少なくとも賃貸借契約書にそれを可能にする条項が入っていなかったら話になりません。


その時点でこの案はジ・エンドです。


仮に入っていたとしても、その条項が有効か無効かは後で争われ る可能性はあります。


行方不明になっている借主が現れて、「自 分は解約した覚えはない」と主張したときです。


次に、連帯保証人に借主の荷物を片付けてしまう権利があるか、 となると甚だ疑問です。


保証人は黙っていたら自分の債務が膨らむだけですから、自分の身を守るために部屋を明け渡した、と主張することになりますが、それが認められるかは難しいと思います。


この方法は、後で損害賠償で訴えられるリスクを承知の上で(そ の可能性は大きくないですが)採用するしかないので、お勧めで きないのです。

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#02

賃料督促の法的手続き

Q. 家賃の督促を法的な手続きで行う場合に、

「公正証書」

「民事調停」

「支払督促」

「即決和解」

「通常訴訟」

などの 方法が紹介されてます。

それぞれの特徴を教えてください。



A. 家賃の支払いが遅れている方 に、最初は電話、文書、訪問などで対応すると思いますが、いよいよ入金がない場合は

「法的手続」に及んだ方がいい場合があります。


目安は、滞納発生から2~3ヶ月でしょうか。


そして、オーナーさんが使える法的手続きとして、挙げられた5つの方法が出てきます(あと、少額訴訟がありますが)。


以下、シンプルに説明していきましょう。


「公正証書」は公証役場で公証人に作成したもらう、公信力のある(内容を真実とみなす)書類です。


裁判をしないでもその内容は真実とされます。


馴染みのある書類として、遺言状がよく公正証書で作られます。


何よりもこの書類が強力なのは、「債務名義」となることです。


つまり裁判をしなくても強制執行で、家財や預金や給与などの財産を差し押さえることが出来ます。


賃料の高い店舗・事務所や高級賃貸住宅は、賃貸借契約書を公正証書で作成した方がいいですよね。


滞納が発生した後に公正証書を活用したい場合は、溜まった家賃の「支払い約定書」を公正証書にする、という使い方があります。


その約束に違反すれば強制執行されることになります。


ただし、「明け渡し」の強制執行は出来ません。


「民事調停」は、貸主と借主が何回か裁判所に通って、裁判官と 民事調停委員のもとで話し合いによる解決を目指すものです。


合意できれば調停調書に記載されて判決と同じ効力があります。


調書に書き込まれれば「強制明け渡し」も可能です。


ただ、何回か話し合いに出席しておいて、最後に借主から「やめました」と言われると「不調」となり、最初から無かったことにされてしまうので、それを知っている不良借主から悪用されることもあるかもしれません。


あまり、お勧めできる方法ではないと思います。


「支払督促」は、貸主が簡易裁判所に行って依頼すると、裁判所が借主宛に督促状を送ってくれます。


特に証拠となるものが無くても応じてくれます。


手続きも簡単で、裁判所に用意されている3枚の用紙に、要求される事項を記入するだけで完成します。


費用も裁判の半分です。


支払督促は、まず借主側に大きなプレッシャーを与えます。


貸主からの内容証明と違い、裁判所からの督促状ですから。


次に、借主が受け取ってから2週間で 「異議の申立」をしないと、判決が確定します。


つまり裁判なしで判決が確 定されるのです。その後「仮執行宣言 の申立」を裁判所から送付し、さらに2週間「異議の申立」がなければ強制執行ができるので、とても強力です。


もし、借主から「異議の申立」があると、 通常の裁判が開かれることになります。


通常の裁判になったら、取り下げるか、そのまま続行するかを判断することになります。


その裁判では和解が勧められることが多いでしょう。


和解調書なら「明け渡し」の強制執行も可能なので、悪い話ではありません。


ご質問の中に「少額訴訟」が抜けて いましたので、その説明もしておきましょう。


少額訴訟は60万円以下の請求金額のときに使える裁判です。


「支払督促」との違いは、実際に法廷で裁判が行われることです。


滞納者に与えるプレッ シャーは「支払督促」より大きいでしょう。


60万円以下といっても、滞納家賃が80万円ある場合、「その中の60 万円について請求する」ということが可能です。


特徴は、一回で判決が下されることです(原則ですが)。


なので、ダラダラ と長引くことは避けられます。


ただし、 明け渡しを求めることはできません。


この点は、「公正証書」「支払督促」 と同じです。


もうひとつ、オーナーさんが原告席に 立たなければなりません。


代理人として弁護士か司法書士(認定が必要)は可能ですが、「少額訴訟」なので、その手の費用をかけるのはどうかと思い ます(親族関係や従業員は代理人になれます)。


公示送達(相手が受取拒否したり住居所不明などの理由により書類の送達ができない場合に、一定期間裁判所の掲示板に掲示することにより送達の効果を生じさせる方法)が出来ないのも欠点ではあります。


その場合は「通常訴訟」になります。


とは言っても、滞納家賃を訴えるには、手軽で短期に判決の得られる制度といえます。


次の「即決和解」は、あまり聞きなれない制度だと思います。


まず「和解」とは、判決まで行かずに当事者の話し合いによって訴訟が終了することです。


判決だと10対0という結果になりますが、和解なら5対5とか、6対4という結果が当事者の話し合いで付けることができます。


裁判では、オーナー側は「すぐに払え」と言い、滞納者は「ちょっと待ってくれ」と言う場合、判決が「すぐに払え」となったとき、「無い袖は振れない」状態になります。


あとは強制執行という不毛な手段しか残りません。


その場合は、当事者が話し合いで「5 回の分割で払う」とかの和解案で合意した方が現実的なケースが多いわけです。


なので、裁判所から和解が勧めら れることが多々あります。


さて「即決和解」とは、文字どおりに「即決」で和解することです。


つまり裁判所に勧められる前に、当事者間では和解の合意が出来ているのです。


なら裁判所に行かなくていいのでは?と 思いますが、それでは単に「約定書」なので強制力がありません。


そこで裁判所に両者で出頭して和解調書を作成してもらうと、これは債務名義になるので、借主が和解内容を違え(たがえ)た時は強制執行が可能になります。


しかも、明け渡しの強制執行も可能なので強力です。


「公正証書」 のところでも説明しましたが、滞納家賃の分割支払いを和解調書にすれば、強力な強制執行のプレッシャーがかかります。


最後の「通常訴訟」 です。


滞納者が次のような場合には、この手続きが向いています。


・滞納金額が高額のとき

 ※ 140 万円を超えると地方裁判所の管轄になります。


・明け渡しを目的とするとき


・相手に訴訟の知識が豊富なとき


・相手が暴力団等のとき


賃料の滞納で通常訴訟となると、目的は判決よりも「強制執行」となるでしょう。


それも、“回収”より“明け渡 し”の強制執行が多いと思います。


140 万円以下の請求額なら司法書士で も可能ですが、明け渡しの強制執行を視野に入れるなら、その方面の経験と人脈(※)の豊富な弁護士に依頼した方 がいいでしょう。

※専門の運送業者や 鍵屋などの多数の人員が必要になります。


弁護士費用も含めて100 万円以上かかる、と言われます。


通常訴訟を選ぶのでしたら、最悪の費用は覚悟しなければなれません。


ただ、この方法でしか解決できない悪質な借主もいますので、その場合は、早めに手を打った方が、それだけ解決も早くなります。


以上、五つの法的手続きを説明しまし たが、滞納の状況によって、どれを選ぶか異なります。


法的手続きの目的は、「家賃の回収」か「退去を迫る」かです。


退去が目的なら、“即決和解”か “通常訴訟”しか、明け渡しの強制執行はできません。


「回収」が目的なら、相手の出方によって“公正証書”や“ 支払督促”いいでしょう。


「プレッシャーをかけて任意で払って貰う」という目的もあります。

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