賃貸経営での避けられないトラブル、ご相談ください

賃貸管理は株式会社きびる不動産(アパマンショップ田川店)

今回は2つの事例をご紹介します

#01

原状回復費用の借主負担について

Q .6年間住んでいた入居者が退去しました。

部屋の状況はかなり痛んでいて、壁のクロスは変色して一部は剥がれています。

カーペットも貼り替えないと使用できない状態でした。

立ち会いの際に、入居者も自分達が汚損させたことは認めていました。

リフォームの見積額は50万円に上り、そのうち畳の表替えとル ームクリーニング費用と、痛みのひどい洋間のクロスの貼り替え、カーペットの貼り替え費用で30万円を請求しました。

入居者は「クロスは経年劣化ではないか」と不満を表しています。

合意できていない費用は10万円くらいです。

当方としてはクロスとカーペットは通常を超えた使用によるもの だし、畳とクリーニングは特約に記載してあるので弱みはないと思っています。

預かっている敷金は16万円です。


この請求は正しいでしょうか。




A まず、現状を正しく理解しておく必要があります。

借主に請求する30万円の内訳の中に、恐らく、洋間のクロスとカーペット費用の全額が含まれていると思います。


これは故意過失・通常を超えた使用による損害としての請求ですが、実は借主には費用全額の負担義務はありません。


請求できるのは残存価値の部分だけです。


入居期間は6年ということですから、減価償却されたあとの残存価値は1円と評価されると思われます。


つまり、借主が負担しなければならないのは工事にかかる費用の1円のみ、ということになります。


残りは貸主が家賃収入のなかから償却という形で負担すべきという考えですね。


次に特約に書かれている「畳とルームクリーニング費用」についても、消費者契約法などを持ち出されると、必ずしも家主の言い分が通るとは限りません。


腹立たしい話だとは思いますが・・。


念のためにお断りしておきますと、家主さんに「だから我慢して借主に敷金を返しましょう」と言っているわけではありません。


借主と有利に交渉を進めるためには、事実を正しく理解しておく必要がある、ということです。


現在の状況は、借主が20万円の負担までは了承している、ということです。


敷金16万円の不足額4万円を借主から徴収する、というカタチになります。


借主のクロスとカーペットの負担額は「1円」で、畳とルームクリーニングも消費者契約法で徴収できないかもしれない、という事実を理解すれば、これが貸主にとってどんなに有利な条件かが分かると思います。


ですから、借主が支払いを了解しているうちに合意 書を作って、差額の4万円を徴収して決着をつけるのが一番良い方法だと思います。


借主の事情が変われば、「敷金を返してほしい」という要望に切り替わる恐れもありますので。

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#02

4ヶ月の滞納者に対する督促

Q. 家賃の滞納が4ヶ月になりました。

どのように対処すればいいでしょうか。

築18年の木造アパートで、間取りは2DK、家賃は78,000 円共益費2,000 円で、敷金を1か月分預かっています。

一人住まいの50歳台の男性で、契約して3 年になります。



A. 今までも、度々に家賃は遅れていたのでしょうか。



Q. いえ、半年前に仕事を辞められて、それから数か月後から遅れはじめました。

最初は「もうすぐ仕事が決まるので待ってほ しい」と言ってましたが、最近では居留守なのか返事もありません。



A. まず大家さんの方針を決める必要があります。

最悪の事態は、更に滞納期間が延びて(例えば8 ヶ月10 ヶ月と か)、そのうえで「明け渡し裁判」を実施して強制的に退去させて解決、となりますが、家賃の貸倒れは1 年分くらいになりますし、裁判費用は弁護士さんと強制明け渡し費用を含めれば100 万円を超えることも想定されます。


合計で200 万円以上の損失になります。


裁判の開始が遅れれば被害額は更に増えます。


それに対して最良の解決は、この方の経済状況が持ち直してくれ て、以前のように家賃を遅れることなく住み続けていただくこと です。


このケースなら大家さんの損害はゼロですし、次の募集に悩む必要もありません。


その可能性が見出せるのか、相手の方が正直に話せる環境を作って話し合うことも大事だと思います。


真ん中のケースは、家賃の滞納額は回収できないかもしれませんが、この方が話し合いに応じてくれて、もっと低額(2万円台から3万円台)の賃貸物件に引っ越してくれることです。


条件が合えば、役所へ生活保護の申請も必要になるかもしれません。



Q. 大家がそこまで面倒を見る必要があるのでしょうか。



A. 大家さんにそのような義務はありません。


ただ、大家さんが正当な権利を行使しても、相手が態度を硬化して(すでにその ような兆候が見られるようです)、徹底的に開き直ってきたら、最悪の事態に向かって突き進む可能性があります。

弁護士さんに頼めば「すぐに法的措置を」と言うかもしれませんが、それは最悪のシナリオだということを知っておく必要はあります。


明け渡し裁判までいかなくても、例えば「支払督促」や「少額訴 訟」という方法もありますが、どちらも「明け渡し」にはならな いので、根本的な解決策ではありません(相手の方が諦めて出て 行ってくれる、という可能性がゼロではありませんが)。


まして過激な督促行為に及ぶと大家さんが訴えられて、もっと最悪な事態になるので、そのような行為は厳禁です。



Q. では、どうしたらよいのでしょうか。



A. 最初の2年半は家賃を遅れずに支払った実績があるので真面目な方だと思われます。


まず冷静に話し合いを進めてはどうでしょうか。

そのときは「家賃の督促」というより「これからの相談にのる」というスタンスで、 相手の方がご自分の状況を正直に話せる環境が大事だと思います。

そのうえで、


・事態が好転する兆しがあるなら待つ(期限を決めて約束が果たせないときは第二の住み替え案に従う合意文書を作成)


・難しいと判断すれば家賃の低い住居への住み替えを勧める(合 意できたら日付を決めて書類を作成)


・相手が話し合いに応じなかったり、対応が不誠実で好転の兆し がないなら法的手続きを検討する


どちらにしても、この結論を30日から45日くらいの間で出すようにしましょう。

もし最悪の事態になったとしても被害は最小限度に抑えたいので、法的手続きは一日も早い方がいいからです。

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